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遺言について 遺言の種類、遺言書を作成した方がよいケースとは

遺言について 遺言の種類、遺言書を作成した方がよいケースとは

遺言書は作成した方がよいとよくいわれますが、そもそも遺言とは何でしょうか。どのような種類があるのでしょうか。またどういう場合に遺言書を作成した方がよいのでしょうか。「遺言」は、日常的には「ゆいごん」と読まれますが、法律上は「いごん」と読むそうです。死後も自分の意見を述べられることを、遺言自由の原則と呼びます。遺言として民法によって法的効力のある事項が定められています。この事項を遺言事項といい、 身分に関すること、財産の処分に関すること、相続に関すること、遺言執行に関することがあげられます。

〇遺言とは 遺言にはどのような方式、種類があるのか

法律上、遺言とは、被相続人の最終の意思表示のことをいいます。あくまで最終の意思表示が優先されますが、よくドラマなどであるような死に際の意思表示である必要はありません。遺言によって、自分が築いた財産の帰属先、処遇などをある程度自分の意思に基づいて相続人に配分することができます。遺言として法的効力がある事項は限られています。それは遺言事項といわれ、身分に関すること、財産の処分に関すること、相続に関すること、遺言執行に関することがあげられます。遺言事項以外については、法的拘束力はなく、例えばお墓は誰に守ってほしい、遺骨は誰に引き取ってほしい、葬儀は質素にしてほしいなどがあげられます。もっとも最近では、遺言書の中に「付言」として、家族に伝えたい思いなどが記載されることがあります。
次に遺言の方式についてですが、大きく分けて2つの方式があります。普通方式遺言と、特別方式遺言です。特別方式遺言は、例外的な場合に限られます。通常利用されるのでは、普通方式遺言です。普通書式遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

普通書式遺言:自筆証書遺言について

自筆証書遺言の作成方法は、遺言者が①全文、②日付、③氏名を自書し押印して作成します。証人は不要です。印鑑は認印でもOKです。遺言書の保管は、遺言者が行います。メリットとしては、最も手軽に作成できる、遺言の内容を秘密にできるなどがあります。またデメリットとしては、法的要件不備のために無効になるおそれがある、偽造や紛失、盗難のおそれ、死後発見されないことがあり得る、開封に家庭裁判所の検認手続が必要で相続人の手間がかかる、などがあります。保管に関しては、2020年7月10日から自筆証書遺言書保管制度が開始されました。この制度では、法務大臣の指定する法務局が遺言書の保管所としての業務を行い、遺言書の管理事務を行うとされています。自筆証書遺言書保管制度における手続を行う際には、申請書または各種請求書等を作成する必要があります。詳細は法務省HPで確認できます。本制度では、法務局で遺言書が保管されるほか、遺言書保管官による遺言書の形式的な確認(署名・押印や訂正方法、日付の有無の確認)や、遺言者の意思確認の実施、家庭裁判所による検認の規定の除外(本制度を活用した場合、検認は不要となる)など、自筆証書遺言固有のリスクと相続人の負担が一定程度軽減されています。一方で、遺言者自ら管轄の法務局へ出頭する必要があり、代理による申請はできないこととされています。また必ず自筆である必要があるため、文字が書けない事情がある場合、この制度は活用することができません。

普通書式遺言:公正証書遺言について

公正証書遺言の作成方法は、2人以上の証人の立会いの下、①遺言者が遺言内容を公証人に口授し公証人が筆記、②これを遺言者及び証人に読み聞かせまたは閲覧させ、③遺言者及び証人2人が署名・押印、④公証人が署名・押印して作成します。証人は2人必要です。印鑑は遺言者は実印、証人は認印でも可です。遺言書の保管は、原本は公証役場で保管します。遺言者には正本と謄本が交付されます。メリットとしては、公証人が作成するので、様式不備で無効になるおそれが少ない、原本を公証役場で保管するので、偽造や紛失のおそれがない、家庭裁判所の検認手続は不要などがあります。デメリットとしては、公証人手数料などの費用がかかる、2人以上の証人の立会いが必要、遺言の内容を公証人と証人に知られるなどがあります。

普通書式遺言:秘密証書遺言について

秘密証書遺言の作成方法は、遺言者が署名・押印した遺言書を封書に入れ、同じ印鑑で封印する、①封書を公証人・証人2人の前に提出、②遺言者が自己の遺言である旨並びに筆者の住所、氏名を申述する、③公証人が封書に遺言者の申述内容及び日付を記載し、署名・押印する、④遺言者・証人2人が封書に署名・押印して作成します。証人は2人必要です。印鑑は認印でも可です。遺言書の保管は、遺言書を公証人役場から持ち帰り遺言者が保管します。メリットとしては、遺言内容を一切秘密にしておける、代筆やワープロで作成できるなどがあります。デメリットとしては、様式不備で無効になるおそれがある、公証人手数料などの費用がかかる、証人の立会いが必要になる、開封に家庭裁判所の検認手続が必要である、紛失のおそれがあるなどがあります。

〇遺言書を作成した方がよいケースとは

遺言書を作成した方がよいケースとしては、遺言者の事情によるものと相続人や相続財産によるものとに大別できると思います。まず遺言者の事情によるものとしては、・死後に認知したい子がいる、・生前に認知した子がいる、・経営を任せたい後継者がいる、・特別に財産を多く与えたい子がいる、・子供の配偶者にも与えたい、・世話になった第三者にも与えたい、・遺産を与えたくない相続人がいる、・遺産を寄付したい、・内縁関係にある人に与えたい、・特別寄与分を認めたい人がいる、・伝えておきたいメッセージがある、・遺留分を侵害する財産分与である、・廃除したい相続人がいる、などがあげられます。また相続人や相続財産によるものとしては、・居住用財産しかない、・換金しづらい財産、不動産や自社株式などが相続財産の大半を占める、・相続人の一部に生前に相当の贈与がある、・相続人間で経済的格差がある、・相続人間の仲が悪い、・相続人に認知症、知的障害者や精神障害者がいる、・相続人の配偶者に問題がある、・先妻の子や後妻の子がいる、・子供がいない、・相続人が誰もいない、・行方不明の相続人がいる、・相続人は配偶者と兄弟姉妹だけである、などがあげられます。こうやってみてくると、相続において起こり得る大半の場合が該当するのではないかと思います。これらは、争族の火種になり得るものなので、あらためて遺言書の作成が重要になってくると思います。

まとめ

以上のように、遺言書の方式や種類、またどんなケースで遺言書の作成をした方がいよいのかについて述べてきました。遺言書の種類としは、定番ではありますが、やはり公正証書遺言が最も推奨されているようです。作成、保管とも専門家である公証人が行いますので、後日の紛争や紛失のリスクが低いと思います。また法的にも安全、確実な面があります。確かに費用はかかるのですが、後日の紛争防止という観点からは、利益衡量上も妥当な選択になるのではないかと思います。また遺言書を作成した方がよいケースをあげてみましたが、相続を取り巻くほとんどのケースで起こり得るのではないかと思います。「遺言書さえあれば、このような争いは避けられたかもしれない」と思ったことが日常の実務において多々あります。その反面、やはり遺言書というのは、自分の「死」というものをどこか想起させるので、人間心理として避ける傾向にあるのかなと思うこともあります(あくまで個人的な見解ですが)。遺産分割調停において、あらかじめ遺言書が作成されているものは少ないようなので、裏を返せば、遺言書が作成されている場合、遺産分割協議は上手く進んでいるのではないかと思います。何れにしろ、遺言書作成の重要性に変わりはないと思います。

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