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不動産相続を取り巻く状況 争族にならないために理解しておきたいこと

不動産相続を取り巻く状況 争族にならないために理解しておきたいこと

相続財産の中には預金などの金融資産の他に不動産が含まれることが多いです。不動産は分割がしにくい、適正な評価額がわからない。現金化するにもいくらで売却できるのかなど、相続の当事者間でスムーズな継承がされにくい傾向にあります。不動産相続においては、相続当事者の高齢化、高齢者の核家族化、争族になる理由などを理解しておく必要があると思います。

〇相続当事者の高齢化、高齢者の核家族化

日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の高齢者の割合)は年々高まっており、私が住んでいる長崎県も例外ではありません。長崎県は多くの離島を抱えており、離島では人口減少、高齢化率の高まりなどが懸念されるところです。高齢者の平均年齢は毎年上昇傾向にあり、被相続人の相続発生時の年齢も高まっています。また同時に相続人である配偶者や子供の年齢も高くなっています。このように高齢化のため、次の相続が近くなり、連続して相続が発生する可能性も高まります。単に2次相続対策だけではなく、孫などの直系卑属も含めた3次、4次相続対策までを見込んだ対策を考えておく必要があります。
日本では核家族化が進んできましたが、このことは高齢者世帯についても言えることです。独り暮らしの高齢者や夫婦だけといった核家族化が進展しています。子供や孫など次世代の相続人とは別の生活をしているため、高齢者に相続が発生した場合、被相続人である高齢者の財産構成や財産状況、遺産分割の考え方について情報不足、コミュニケーション不足が生じやすくなります。さらに、年齢とともに記憶も薄れてくるため、被相続人と相続人間だけなく、相続人同士でも理解度の濃淡、思い込み、思い違いなどが生じるおそれがあります。その結果、相続で最も重要な事前の検証が疎かになり、事前対策がなされることなく、あやふやなまま時間だけが経過し、最悪争族へと発展する可能性もあります。高齢化に伴う物忘れ、認知症などの精神的なことだけでなく、病気などの肉体的なトラブルは誰にでも起こり得ることなので、健康なうちに遺言書の作成、家族信託の採用、成年後見人の活用などを含めた事前対策を行う必要があると思います。

〇相続財産には不動産が含まれることが多い

個人資産は、預貯金などの金融資産と不動産が一般的ですが、これらのうち65~70%近くは高齢者世帯が保有しているいわれています。さらに、相続財産のうち、不動産の占める割合は65%程度を占めていて、金融資産が少なく不動産が多くあるという世帯では、仮に相続税が発生した場合、納税資金が潤沢にあるわけではないので、相続税の納付が困難になる可能性があります。手持ちの不動産を現金化するにしても、直ぐに売却できる優良物件であればいいですが、例えば車の進入ができない不動産など利便性の劣る不動産の場合、売却に時間がかかる、もしかしたら売却できないかもしれません。一方、相続税のかからない世帯では、相続財産のうち資産価値の大きいものは自宅のみといったケースが多いです。このように一つの不動産しかない場合、相続財産の分割に関してもめ事の原因になりかねません。例えば、現金化を希望する兄弟がいる一方、自分の生家は残したいあるいは自分が住みたいといった各人の思惑にちがいがあると、たちまち争族になってしまいます。このように相続財産に不動産が含まれる場合、分割方法、評価方法などあらかじめ共通認識をもっておくことが大事であると思います。

〇争族になる理由 財産分割上の損得といった感情面の対立

「争族」とは何でしょうか。文字通り争いごとですが、相続をめぐる争いを指します。「争族」とは、財産分割上の損得といった感情面の争いであるといわれます。とはいっても、損得といったお金だけの側面ではなく、むしろ感情面での対立が強いように思います。感情面については、被相続人と相続人、相続人同士で起こった過去の出来事、例えば資金援助の多寡、生前の仕打ちなど、これらが心のしこりとなり、相続発生と同時にその当時の記憶がよみがえり、感情面での対立を招くようです。相続人の言い分で「お金じゃありません。あの時のことがどうしても許せないのです。」といったことがよく聞かれます。このような感情論が遺産分割協議の障害になっている場合が多々見受けられます。相続財産全般については、以上のようなことが言えると思いますが、不動産に関して争族が起こる理由としては、以下のことがあげられます。まず不動産には様々な役割があります。所有している不動産の種類、性格などにより、住まいとしての役割、賃貸収益を生み出す役割、自らの事業の基盤としての役割、金融機能としての役割、将来設計のための役割などいろいろな側面を有し、また価値的な違いもあります。これらの不動産のうち、どの不動産を所有するのが有利か、一番得するのはどれかなど、相続人間の思惑が働いて争いに発展することが考えられます。また対象となる不動産が、親の居住用の不動産しかないような場合、特に複数の相続人がいると、現金化すべき、いや生家なので残したいなどこれまた思惑が働き、争いが起きやすくなります。「思惑」という文言は、その背後に感情面という要素があるので、やはり争族の原因は感情面での争いが大きなウェイトを占めるのではないかと思います。



〇まとめ

不動産の相続対策における課題には、争族(分割など)、資金(納税など)、税務(節税など)の3つがあげられます。ここでは、一番目の争族を中心に取り上げましたが、その他の課題も非常に重要です。相続当時者の高齢化は認知症などの懸念があり、遺産分割の障害となります。また多くの世帯では、相続財産に不動産が含まれることが多く、不動産自体が分割しにくい、そのことが相続争いの原因になっています。争族を避けるためには、当事者間のコミュニケーションの充実、共通認識の形成、それらに基づいた遺言書の作成などが必要であると思います。生前仲の良かった家族が相続をきっかけに犬猿の仲になったというのは、よく聞く話です。そうならないためにも、今まで述べてきた不動産相続を取り巻く状況を理解されて、争いのないスムーズな遺産分割を目指されることを希望します。

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